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平成12年度中小企業対策に関する要望
平成11年6月23日
わが国経済は、金融機関の経営に対する信頼の低下や雇用不安が重なり、景気回復の主役たるべき個人消費や民間設備投資が不振を極め、憂慮すべき状況にある。なかでも、中小企業は、国際競争の激化のもと、流通構造や下請分業構造の変革への対応も迫られており、その体力はまさに瀕死の状況にある。
わが国の経済発展の原動力である中小企業の活力が沈滞していることは由々しきことであり、現在の閉塞状況を打破し、わが国経済が新たな躍進を遂げるためには、中小企業が活力を取り戻し、持ち前のダイナミズムを発揮できる環境整備が不可欠である。
政府におかれては、わが国経済社会に占める中小企業の重要性を今一度認識し、下記の措置を講じられたい。



1.景気対策の機動的な追加実施

昨年11月の緊急経済対策や平成11年度税制改正等に盛り込まれた一連の景気対策が本格的に動き始め、一部でその効果 も見られる。しかしながら、個人消費や民間設備投資の不振は根強く、本格的な景気回復のためには、必要に応じて景気対策を追加実施することが必要である。

2.中小企業基本法の見直し


中小企業の範囲は、昭和48年に中小企業基本法の一部改正がなされたものの、その後今日まで改定が行われていない。しかし、この26年間における経済規模の拡大や株式会社の最低資本金が 1,000万円になったことなどを考慮すると、少なくとも中小企業基本法における中小企業の資本金基準については、その規模を拡大すべきである。先般 の中小企業政策研究会の最終報告に示されたラインで、中小企業政策審議会で更に検討を進められたい。


3.中小企業対策予算の大幅な拡充

平成11年度中小企業対策予算(2,015億円)は農林水産関係 予算(3兆4,056億円)の約17分の1と極めて少額である。日本の産業基盤であり、雇用の受け皿でもある中小企業が、現下の厳しい経営環境の中で新規創業・経営革新等に意欲的に取り組むのを支援するため、中小企業予算の思いきった拡充が必要である。また、中小企業の範囲見直しにともなう中小企業の増加によって、1社あたりの対策予算が希薄とならないためにも、中小企業予算の拡充が必要である。


4.資金調達の多様化支援

金融機関が貸出債権の圧縮や選別融資を強化しつつある現在、間接金融に依存している中小企業は必要な資金の調達難に直面 している。今後、中小企業の経営安定を維持するために、次のとおり、公的信用保証の多角的な利用を図り、短期的には中小企業向けに間接金融の強化を促すとともに、中期的な観点から私募社債市場の整備・活性化を図られたい。

(1)中小企業向け間接金融の強化
1.中小企業金融安定化特別保証(貸し渋り対応特別 保証)制度の延長

中小企業金融安定化特別保証(貸し渋り対応特別保証)制度の実施は中小企業の資金繰り改善に一応の効果 があった。しかしながら、金融機関の破綻が依然続発しており、金融不安が再燃している中、中小企業に対する貸し渋りが根本的に解消されたとは言い難い。中小企業に対する資金供給の道を引き続き確保するため、平成12年3月末で期限切れとなる同制度の取扱期間の延長並びに保証枠の拡大が強く望まれる。また、信用補完制度の充実を図るため、基金の積み増しにより、中小企業信用保険公庫及び各地信用保証協会の体質強化を図られたい。

2.小企業等経営改善資金融資制度(マル経)の拡充、運用緩和

融資規模 5,500億円を引き続き確保するとともに、平成12年3月末で期限切れとなる貸付限度額の別 枠措置(450万円)について、本枠・別枠の区別を撤廃し、限度額を 1,000万円にする形で存続を図られたい。また、新規開業を目指す企業者を対象とした「新規開業者経営改善貸付」は、融資対象者の条件が厳しく、貸付実績も上がりにくいため、貸付対象の資格など融資条件を緩和されたい。

3.政府系中小企業金融機関による融資金利減免措置の延長

金利5%超の政府系中小企業金融機関の既往貸付に対して講じられているいる金利減免措置について、期限切れとなる本年10月18日以降も延長されれたい。

4.金融機関の中小企業向け貸出債権の流動化促進

金融機関の貸出余力拡大のため、金融機関が保有する中小企業向け貸出債権を特定目的会社(SPC)に譲渡して流動化を図ることが望まれる。その際、SPCが発行する貸出債権担保証券に公的保証を付与し、金融機関の貸出債権の流動化を促進する。

(2)私募社債市場の整備・活性化
1.信用保証協会による信用補完措置

中小企業の私募社債発行に際し、信用保証協会の保証を付与するなど、担保提供を必要としない直接金融による資金調達の道を開かれたい。また、信用保証協会の保証付き私募社債の流通 を円滑にするため、転売しても保証が自動的に移転するように措置されたい。

2.中小企業私募社債のパッケージ化による流動化促進

中小企業単独の私募社債では発行額が小さいため、受託・引受機関(銀行、証券会社等)及び投資家の双方にとって魅力に欠ける。そこで、受託・引受機関が複数の中小企業の私募社債をパッケージにして特定目的会社(SPC)に売却し、同SPCが私募社債担保証券を発行する際、これに公的保証を付与して流通 促進を図られたい。


5.中小企業税制の見直し


(1)外形標準課税導入の反対

地方における税収の安定化を目的とする外形標準課税は赤字法人にも課税することになり、厳しい経営環境の中、存続のための経営努力を重ねている中小企業の現状や新規事業を立ち上げる場合、当分は赤字が続くことが予想されることなどに鑑みて、絶対反対である。
(2)中小法人の軽減税率適用年間所得金額の引き上げ
昭和56年以降 800万円に据え置かれている中小法人に対する法人税の軽減税率適用年間所得金額を 1,500万円に引き上げられたい。
(3)同族会社の留保金課税の廃止
留保金はエクイティファイナンスなどによる資金調達ができない同族会社にとって重要な資本充実策であるとともに、経営危機に備えるための資金でもある。留保金に対する課税は同族中小企業に対し過重な税負担を強い、経営基盤の強化を大きく阻害するので廃止されたい。
(4)事業承継税制の改善
現行の相続税・贈与税の下では、事業承継に係わる過重な税負担によって、中小企業の円滑な世代交代や事業の存続が不可能となる事態が懸念される。そこで、相続税の最高税率を50%に引き下げるとともに、累進構造を緩和されたい。また、取引相場のない株式の評価方法については、中小会社も 100%類似業種比準方式で評価しうるよう改めると同時に、類似業種比準方式にかかる減額率を50%に引き上げられたい。
(5)土地税制の改善
固定資産税は、依然として続いている地価の下落傾向に反して過度に税負担が負担が重くなっている。土地評価に収益還元方式を導入するなど負担軽減を促す措置を講じられたい。また、登録免許税及び不動産取得税についても、低迷している土地取引を更に冷え込ませ、土地の有効利用を著しく阻害する要因となっているので、軽減措置を講じられたい。

6.中心市街地・商店街等の活性化対策の拡充・強化


(1)「街づくり3法」の運用における地方の権限強化、

大店立地法の機動的な運用見直し
街づくり3法」の運用にあたっては、地域事情に合った計画的な土地利用を促進するため、都市計画に関する地方の権限を強化することが必要である。
(2)大規模小売店舗立地法の効果的な運用
大規模小売店舗立地法(大店立地法)の実施にあたっては、地域総合経済団体としての商工会議所の意見・役割を重視し、商工会議所が地元意見の取りまとめ等のために実施する調査研究事業について助成措置を講じられたい。また、大店立地法の環境基準(駐車場、ごみ、騒音)は、集客力のある大型小売店の郊外シフトを加速し、かえって中心市街地の空洞化を引き起こす懸念もあり、新たな都市環境問題が浮上することも考えられるので、こうした問題が発生した場合には機動的に運用の見直しを行われたい。
(3)中小商業活性化基金の存続
長引く消費不振に加え、大店法の廃止、外資の躍進、消費行動の多様化など中小商業を取り巻く環境はかつてなく厳しい。こうした中、新たな発展に取り組む中小商業者にとって本基金による活性化事業は不可欠であるので、是非とも存続されたい。

7.ものづくり支援の一層の拡充

(1)中小企業技術革新促進制度の特定補助金等の大幅な拡充
昨年12月の新事業創出促進法に基づき、技術開発に取り組む中小企業を支援するために創設された「中小企業技術革新促進制度」(日本版SBIR)は大変有意義な制度であるので、特定補助金等(平成11年度 110億円)の大幅な拡充を図るとともに、申請手続きを簡素化されたい。
(2)中小企業新技術体化投資促進税制(メカトロ税制)の適用期間延長
現行制度は平成12年3月末で期限切れとなるので、更に期間延長を図られたい。
(3)「近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律」の廃止
近畿圏の産業と文化の活性化に大きな制約となっている「近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律」を早急に廃止されたい。

8.雇用の創出・流動化支援

(1
)「新規・成長15分野プログラム」の着実な推進
情報通信、医療・福祉など「新規・成長15分野」を中心に規制緩和を推進し、中小企業における雇用機会の創出を促進されたい。
(2)被雇用者・失業者の職業能力の向上
政府の雇用対策原案にも示されているように、職業訓練の民間教育機関への委託を拡充するとともに、被雇用者に求められる技能が多様化している現状を踏まえ、幅広いメニューが用意された職業能力開発事業を早急に実施されたい。
(3)中高年労働者の採用、中高年労働者向け職場改善設備投資に対する助成
企業における雇用リストラの主な対象となっている中高年労働者の雇用機会を促進するため、中小企業が中高年労働者を採用した場合や、中高年が働きやすい職場環境を整備するための設備投資を行った場合等に助成措置を講じられたい。
(4)労働力移動の円滑化支援
雇用のミスマッチ解消を目的に労働力の流動化を促進するため、従業員の再就職支援に必要な資金を経理上損金として積み立てできる「再就職支援準備金制度」を創設するなど、優遇税制を講じられたい。また、資金の拠出時や運用時は非課税とし、年金を支給する時点で課税する確定拠出型年金制度(日本版401k)の円滑な導入を図られたい。

9.中小企業の経営基盤の強化

(1)ベンチャービジネス促進税制の創設
1.ベンチャービジネスへの投資家の投資ロスと他の所得との損益通 算を認めるなど 現行エンジェル税制を抜本的に改正されたい。
2.投資家がベンチャービジネスに対する投資額の2分の1相当分を当該年に所得控  除しうる制度を創設されたい。
3.ベンチャービジネスに対する貸金については貸倒引当金の割合を引き上げられた い。
(2)ISO14000シリーズ認証の取得促進
中小企業においても、国際標準規格に基づく環境管理の実施に積極的に取り組んでゆく必要がある。そこで、中小企業によるISO14000シリーズの認証取得を支援するため、専門家の派遣に必要な費用の補助を拡充する。
(3)取引環境の整備
独占禁止法の厳正運用等により企業間の自由な取引環境を整備する一方、下請代金支払遅延等防止法の厳正運用及び下請取引斡旋事業の充実により下請中小企業の経営の強化を図る。

10.小規模事業指導補助金の交付自治体の一元化

仄聞するところによると、小規模事業指導補助金が都道府県と政令指定都市及び中核市とで区分されるような動きがあるが、事業運営の効率性や統一性を維持するため、同補助金の交付自治体については一元化されたい。


2003.4.1更新
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