年頭所感(2019年)

 
2019年1月1日


 謹んで新年のお祝いを申しあげます。

 昨年は日本各地で地震、豪雨、台風など大規模な自然災害による被害が相次ぎましたが、日本経済は好調な生産、輸出、設備投資を背景に緩やかな景気拡大が続きました。一方、世界経済は激化する米中の貿易摩擦や英国のEU離脱交渉の難航など、景気の先行きを不安定にする要因が顕在化した一年でした。
 こうしたなか、大阪・関西にとって何よりも明るい話題は「2025年国際博覧会(万博)」の大阪開催が決定したことでした。「平成」の締めくくりの年に、大阪・関西が次の時代を切り拓くための大きな夢と目標を得ることができたのは誠に嬉しい限りです。

 2025年万博は、未来社会の主役である若い世代が中心となって、グローバルな社会課題の解決策を世界に発信し、人々の未来への希望や期待を高めるための絶好の機会と言えます。その好機を最大限に活かすには、万博開催までの6年余りの間、地元・大阪・関西において、人や投資を呼び込み、イノベーション創出やビジネス交流を加速させ、万博のコンセプトである「未来社会の実験場」に成長した大阪・関西の姿を国内外に示して行く必要があります。
 今後、博覧会協会を中心に、国、大阪府・大阪市、経済界が一体となって準備を進めてまいります。

 博覧会の具体的な内容については、近く国での検討が始まりますが、大阪商工会議所でも、様々な実証実験プロジェクトについて積極的に提案していきたいと思います。例えば、日本の先進医療のショーケースとなる病院の整備、交通関連の多彩なサービスをワンストップで提供する情報インフラ「MaaS」の整備、流通に関するパーソナルデータを収集・活用するデジタル経済圏の形成などです。国内外のスタートアップや中小企業などから提案を募り、それらアイデアや技術を万博プログラムに実装していく仕組みを作りたいと考えます。
 また、第四次産業革命を体現する、国の「スーパーシティ」構想についても、官民が連携して、この制度の活用を促してまいります。

 本会議所では既に、中期計画「たんと繁盛大阪アクション」の重点事業として、これらに先行した各種事業を推進しています。15年以上の実績を持つ創薬や医療機器に関する産官学連携プラットフォームの運営ノウハウを活かし、ヘルスケア、スポーツ、食等の幅広い分野を「ウエルネス産業」と捉え、ビジネスとしての認知症予防や運動機能の維持に取り組んでいます。
 また、大阪工業大学と共同運営する都市型オープンイノベーション拠点「Xport(クロスポート)」、さらには「町工場ネットワーク」を通じて、大企業からスタートアップまで様々な企業の交流、連携による新ビジネスの創出、イノベーション・エコシステムの構築に力を注いでいます。そこから生まれた新しいビジネスモデルに対して、大阪府、大阪市とともに実証実験の場を提供するなど積極的な支援も行なっています。

 大阪の「食」については、大阪観光局と連携し、大阪ならではの多様で上質な「食」の魅力を一層磨きあげ、「食の都・大阪」を国内外に伝えていきたいと考えています。

 こうした未来志向の課題はもちろんですが、地域経済の基盤である中小企業の「人手不足」や「事業承継」といった足元の喫緊の課題にも鋭意取り組んでいかなければなりません。本会議所では2018年度から「人材確保・育成総合支援アクション」として、中小企業向けの採用支援、生産性向上のためのIT化推進、外国人材受け入れの政策提言などを実施してきました。
 企業にとって成長の制約要因となりかねない事業承継問題についても、2018年度から3カ年の「1万社支援アクション」を策定し、本部・支部をあげてセミナーや個別相談など、きめ細かな支援活動を展開しています。「人手不足」「事業承継」の両課題については、今年も引続き重点的に取り組んでまいります。

 30年続いた「平成」の元号が改まる本年は、まさに新しい時代の幕開けに相応しい年となります。本年を「たんと繁盛大阪アクション」の総仕上げの年として、また「未来社会のデザイン」に向けた具体的な活動をスタートさせる年として、大阪・関西の大きな「夢」の実現を目指し、新しい課題に挑戦してまいりたいと存じます。
 皆様方には、本年も一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 以 上  

2019.1.1更新
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